えぇ、少し前に予告した持論アニメコラムの新連載。
今度のテーマは「美少女化」です。
この記事をご覧の皆様は「歴史上の人物が美少女キャラクターもしくはイケメンキャラクターになった作品」と聞いて何を思い浮かべますか?
2021年現在、こんな設定のゲーム・アニメ・マンガはもう腐るほど存在します。
しかし、15年程前までは「歴史上の人物の美少女化」なんて設定はほぼ存在しませんでした。そもそも「擬人化」ですらまだ珍しく、「美少女化」なんてものはマニアック中のマニアックなアイデアと誰もが感じている時代でした。
そんな時代に「美少女化」をそれまでの「マニアック」な設定から「普通」の設定へと変化させるキッカケをつくった作品が生まれました。
その名も『恋姫†無双 〜ドキッ☆乙女だらけの三国志演義〜』です。
もう“名は体を表す”とことわざにピッタリのタイトルで、早い話が美少女ゲームです。しかも18禁。つまり、れっきとしたアダルトゲームなのです。
なぜ、たかがアダルトゲーム(失礼)がそれまでの常識を覆すような現象を起こせたのでしょう?
それは、図らずも多くのクリエイターたちの間で恋姫無双のコンセプトが拡散されたからです。
三国志に登場する武将が「美少女化」している設定自体は『まじかる無双天使 突き刺せ!! 呂布子ちゃん』や『一騎当千』など「恋姫無双」以前からありました。
上記の2作はいずれもマンガなのに対して、恋姫無双はゲームが原作です。
この違いが「恋姫無双」を出版社の枠を超えて漫画家やイラストレーターなどのクリエイターたちに拡散させることになりました。
呂布子ちゃんや一騎当千はマンガであるため、その権利は作者とともに出版社に委ねられます。なので当前ながら他社から同名作品が描かれたり、世界観を共有する作品が作られることはありません。
しかし、恋姫無双を制作したゲームブランド「BaseSon」はどこかの出版社に所属しているわけでもなく、原作者も存在しません。そのため「恋姫無双」はコミカライズについては、許驚くほど自由に行われました。
例えば、「恋姫無双」シリーズのコミックスはアンソロジーコミックだけでも50冊を超えます。重複していることも考えて、仮に一冊で7人の作家が関わっているとすると、単純計算で350名がこれまで「恋姫無双」を描いたことになります。
元がアダルトゲームなのでエロ要素のNGもなく、当時すでに広まっていた典型的な萌え系のキャラクターデザインと合いまって、これだけ大人数の漫画家、イラストレーターが「恋姫無双」に関わることになりました。
もちろん同人誌や未発売の作品もあるでしょうから「恋姫無双」に縁のあるクリエイターはさらに増えるでしょう。
ともかく、この一連のコミカライズによって多くのクリエイターたちに「三国志の武将の美少女化」というコンセプトが自然と刷り込まれていきました。
この刷り込みが後のもう一つの現象へとつながることになります。
続く……。
【知られざる美少女化のパイオニア】