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【知られざる美少女化のパイオニア】
前回は「恋姫無双」に続いて起こった2010年頃の「戦国美少女ブーム」についてお話しました。
というわけで、“美少女化設定の一般化”という今回のテーマで最後に触れたいのはズバリ「擬人化」についてです。
「擬人化」は皆さんご存じの通り、生物・無生物問わずあらゆる物体や現象を人間に置き換えるという、八百万の神を信じる日本人が特に好む趣向の一つです。
早い話「○○を人間にしてみた。」設定のことです。よく「鳥獣戯画」が最古例(?)として取り上げられます。
そんな「擬人化」ですが、イラストレーターによる“萌え絵”のアイデアとして徐々に広まり、マンガ・アニメでの設定としては2000年代後半から散見されるようになりました。(※私見)
当時の比較的有名な作品としては「ヘタリア」「うぽって!!」などがあります。
とはいえ、まだまだ大ブームを起こすほどの存在感はありませんでした。
しかし「擬人化」という手法自体は、先述したようにイラストレーターの間で自然と定着していき、それを享受するファンにとっても次第に身近な設定になっていきました。
そんな「擬人化」の浸透と並行して起こっていたのが、これまでの記事で指摘してきた「恋姫無双」と「戦国美少女ブーム」による歴史人物の“美少女化”でした。
どちらも最終的には“美少女ではないものを美少女にする”という思考が元なので、この2つの「歴史人物の美少女化」と「擬人化」のムーブメントがつながっていくのは必然の出来事でした。
そして、この「歴史×擬人化」の組み合わせが化学反応して誕生したのが『艦隊これくしょん -艦これ-』と『刀剣乱舞』です。
この2作がこれまでの擬人化と大きく違ったのは、キャラクターたちに「歴史」要素が組み込まれていた点で、これは男女のオタクに共通する“情報”に対する欲求を多いに刺激しました。
「艦これ」でいえば艦娘の元となる”艦艇の戦歴”、「刀剣乱舞」でいえば”刀の持ち主”や“遍歴”など、多くのファンが擬人化したキャラクターたちの歴史を辿ることに熱中したはずです。
この歴史要素はビジュアル重視だった「恋姫無双」や「戦国美少女」、過去の「擬人化」作品などにはあまり見られなかったポイントで、「艦これ」後の擬人化はビジュアルだけでなく、こうしたキャラクターのバックグラウンドが重視されるようになりました。
過去の「擬人化」を圧倒する規模で大ブームとなった「艦これ」。そして、女性向け「擬人化」(※イケメン化とも)として代表的な存在となった「刀剣乱舞」。この2作品によって「擬人化」しいては「歴史人物の美少女化」は完全に定番化していきました。
そして、誕生から数年たって存在感が薄れた「恋姫無双」やブーム当時の「戦国美少女」作品たちに代わって、次々と新しく「美少女化偉人」たちが誕生していきました。
同時に「擬人化」も多様化していき、「けものフレンズ」や「アズールレーン」「はたらく細胞」などのヒット作も現れました。
そんなわけで、過去4回の連載に渡って「美少女化」現象に関する持論を述べてきました。
まとめると
・「恋姫無双」をキッカケに武将を美少女として描く“美少女化”のアイデアがイラストレーターやマンガ家を中心に拡散。
・“美少女化”のアイデアを活かすべく、もう一つの武将の晴れ舞台「戦国時代」を元にした「戦国美少女ブーム」が発生。
・同時進行する形で「擬人化」が浸透していき、歴史要素も加わった「艦これ」、さらに女性向けでは「刀剣乱舞」が大ブームを起こす。
・上記2作の大ブームと「戦国美少女ブーム」の落ち着きにより、“美少女化”が誰でも手を出せる設定となる。
みたいな感じです。
さすがに女性向け作品は詳しく存じ上げないので、『文豪ストレイドックス』のように偉人のイケメン化作品を上手く組み込めなかった点は諸々申し訳ありません。ただ文スレも「恋姫無双」や「戦国美少女ブーム」の影響を全く受けなかったことはないハズです。
おそらく今後も様々な時代を元に“美少女化”や“イケメン化”作品は大小問わず生まれてくるでしょう。
それでは第2回となる連載企画にお付き合い頂きありがとうございました。
終わり。
【知られざる美少女化のパイオニア】
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⑥ミリタリーアニメが「ストライクウィッチーズ」で始まり「ガルパン」で終わるかはこれから次第