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【今週の少年ジャンプ番外編】『ONE PIECE FILM RED』が100億を超えるために解消すべき2つの欠点



▼以前の連載はこちら▼

【今週の少年ジャンプ番外編】劇場版ワンピースが次回作あたりで最高傑作となりそうな理由①

劇場版ワンピースが次回作あたりで最高傑作となりそうな理由②

劇場版ワンピースが次回作あたりで最高傑作となりそうな理由③

劇場版ワンピースが次回作あたりで最高傑作となりそうな理由④

 

先日TVアニメ放送1000回を迎えた『ONE PIECE』ですが、番組ラストで劇場版最新作『ONE PIECE FILM RED』の公開がPV映像とともに発表されて大きな話題となりました。

というわけで今回は、劇場版最新作発表を記念して「RED」が興行成績100億円を突破するために解消すべき2つの欠点についての持論を、およそ半年前このブログ内でお伝えした連載「劇場版ワンピースが次回作あたりで最高傑作となりそうな理由」を元にご説明したいと思います。

 

まず劇場版ワンピースについて振り返りますと、2000年の第1作『ONE PIECE』から2019年の第14作『ONE PIECE STAMPEDE』まででシリーズ累計約380.7億円の興行収入を記録しており、2009年公開の第10作『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』からは原作者である尾田栄一郎先生が製作総指揮として参加しています。

「ストロングワールド」は当時の劇場版ジャンプアニメ歴代最高の興行収入となる48億円に到達。次作で2012年公開の『ONE PIECE FILM Z』は興行収入68.7億円を記録し、『鬼滅の刃 無限列車編』が公開されるまで、歴代No.1の記録を保持していました。

ちなみに「ストロングワールド」以前の2000年から2009年まではドラえもんやコナンのように毎年新作が公開される形をとっていました。興行収入面では2作目で2001年公開の『ONE PIECE ねじまき島の冒険』が約30億円を記録してからは右肩下がりで、2006年~2008年作品にいたっては約9億円まで落ち込んでいました。

 

そんな劇場版ワンピースですが、長らく大きな2つの欠点を内容的に抱えていました。それは「画一化したクライマックス」と「本編との無関係性」です。

 

まず「画一化したクライマックス」についてですが、実は劇場版ワンピースは第1作目から12作目の「フィルム Z」にいたるまで、設定などの違いはあれど、一部例外を除いてクライマックスがほとんど同じなのです。

簡単に言えば「敵の部下に2人に対し、ゾロとサンジが個別に戦って勝利をした後、敵の大将をルフィがタイマンで撃破する」というフォーマットです。

長い連載期間および放送期間で、麦わらの一味のメンバーはどんどん増えていきましたが、実力の差で劇場版クライマックスの出番はずっとルフィ・ゾロ・サンジの3強が中心のままでした。ファンの多くもこの繰り返えされるフォーマットに気づいていたのか、先述した通り尾田先生初参加の「ストロングワールド」まで、毎年興行収入が下がり続けるという状態に陥っていました。

 

しかし、この「画一化したクライマックス」という欠点は『ONE PIECE FILM GOLD』での変化に引き続いて、『ONE PIECE STAMPEDE』において完全に解消されました。

まず「フィルムゴールド」では、ゾロが一時囚われの身になったほか、クライマックスでは敵3人に対して麦わらの一味がそれぞれ"ペア"の形で応戦。そのうちの敵一人はウソップ(&チョッパー)が撃破するという過去作にない展開となりました。

さらに「スタンピード」においては、クライマックスの主体が麦わらの一味から、それ以外の人気キャラクターへと大々的に変化し、トラファルガー・ローボア・ハンコック、スモーカー中将、ついでにバギーなどが活躍しました。

 

もちろん両作品ともフィニッシュは主人公であるルフィが決めましたが、明らかに「フィルムゴールド」と「スタンピード」は、それまでの「ルフィ・ゾロ・サンジによるタイマン式クライマックス」から大きく変貌を遂げ、それまでのマンネリの壁の一つを打ち破ったのです。

なので1つ目の欠点である「画一化したクライマックス」についてはすでに解決しています。よほどのことがない限り、この欠点が「RED」で再発される可能性はないはずです。

 

 

一方、もう1つの欠点である「本編との無関係性」については、まだ完全な解消には至ってはいません。そして、これこそが劇場版ワンピースが100億を超えるために最も解決すべきポイントなのです。

 

劇場版作品といえば、今でこそ「原作ストーリーの映像化」や「本編では描かれない新作ストーリー」がだいぶ当たり前のようになりましたが、ほんの少し前まではクレヨンしんちゃん名探偵コナンのように「本編と無関係のオリジナルストーリー」が一般的でした。劇場版ワンピースも第1作から「スタンピード」にいたるまで「本編と無関係のオリジナルストーリー」として作られています。この「本編との無関係性」は、原作に縛られない自由な物語や設定をつくれるメリットがある一方で、原作ファンにとって「見る価値がない」と判断されるデメリットがあります。

「ストロングワールド」は初めて尾田先生が制作に関わったこともあり、“金獅子のシキ”という原作マンガにも名前が出ているキャラクターが登場し、初めて本編との“関連性”を感じさせることで原作ファンの関心を引き寄せることに成功しました。

それ以前は、麦わらの一味以外の本編キャラクターが出ることすらほぼなかったのに対して、「ストロングワールド」に続く「フィルム Z」では青雉、黄猿をはじめとする海軍本部のメンツが登場し、「フィルム ゴールド」ではサボやロブ・ルッチの他に隠しキャラが多数出没。そして「スタンピード」では先述した通り、麦わらの一味以外の人気キャラクターが続々と登場しただけでなく、物語にもしっかりと関わりを持ちました。尾田栄一郎先生製作総指揮によって劇場版ワンピースは確実に本編との関わりが増えたのです。

 

しかし、それでも劇場版作品は「本編とは無関係のパラレルワールド」という枠組からは抜け出せておらず、近年の劇場版作品のトレンドである「原作ストーリーの映像化」や「本編では描かれない新作ストーリー」を生み出せていないのです。これこそが劇場版ワンピースにとって最大のネックとなっているのです。

 

近年の例でいえば、『鬼滅の刃 無限列車編』や『銀魂 THE FINAL』は前者にあたり、『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』や『ドラゴンボール超 ブロリー』、近々公開予定の『劇場版 呪術廻戦 0』は後者にあたり、いずれも劇場版ワンピースと異なり“本編”もしくは“公式設定”として扱われています。“本編”および“公式設定”となれば、原作ファンとしては「作品を理解する上で見逃せない」という心理が生まれ、「本編とは無関係のパラレルワールド」の劇場版よりも明らかに見る価値が高まります。

この「作品を理解する上で見逃せない」価値、すなわち「直接的な本編との関連性」が劇場版ワンピースに足りていない最大かつ最後のピースなのです。

 

まとめますと「RED」が歴代最高を更新し、劇場版ワンピースとして初めて100億円の大台を突破するには、「本編との関係の有無」が大きく関わってくるのです。

数少ない現時点の情報では、ワンピース本編でも未だ謎が多い“赤髪のシャンクス”が物語の大きなカギとなっているそうですが、一方で尾田栄一郎先生のコメントからは”伝説のジジイ”ではなく”女子”が登場することが示唆されています。

 

果たして『ONE PIECE FILM RED』は劇場版ワンピース初の本編関連の作品となるのか?今後の続報に期待したいと思います。

 

以上、最後までご覧いただきありがとうございます。