TAMAHACHI08 -official blog-(※旧・大西洋少年ジャンプ総合研究所)

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【持論アニメコラム】アニメ化は”通年”と”1クール”どちらが正解か?①通年アニメのデメリット



鬼滅の刃 遊郭編』『呪術廻戦0』など、相変わらずアニメの話題に事欠かない2022年ですが、こうしたヒット作を見て改めて気づいたことがあります。それは、ここ最近ジャンプアニメの劇場版および深夜帯アニメの制作が増えている一方で、”通年アニメ”が減っているということ。

ちなみにここで言う”通年アニメ”とは、3カ月毎の1クール単位ではなく、1年以上にわたって断続的に放送されるアニメのことを指します。簡単にいえば「ドラえもん」や「ポケモン」「プリキュア」とかのことです。

 

現在の少年ジャンプ連載作品のアニメを例にすると、通年アニメは2作(『ONEPIECE』『ブラッククローバー』)なのに対して1クール単位のアニメは3作(『僕のヒーローアカデミア』『Dr.STONE』『呪術廻戦』)。

一見大差ないように見えますが、すでに原作が完結した先述の『鬼滅の刃』はもちろんのこと、『ぼくたちは勉強ができない』『約束のネバーランド』『火ノ丸相撲』も1クール単位(2クール放送含む)で放送されており、今後放送予定の『チェンソーマン』『あやかしトライアングル』もおそらく1クール単位で放送されると思われます。

 

お気づきになるジャンプファンもいるかと思いますが、実は2017年から2021年まで放送されたアニメ版『ブラッククローバー』を最後に、その後制作されたジャンプアニメは全て1クール単位で制作されているのです。なお2022年現在も放送中の通年アニメは、『ONE PIECE』と前シリーズを引き継ぐ形で続く『BORUTO-ボルト-』(原作は本誌から移籍済)を含めて2つのみ。

銀魂』や『ワールドトリガー』のように始まりは通年アニメだったのが、その後諸々の事情で1クール単位になったように、いつのまにか"通年アニメ"はものすごくマイナーな存在になっていたのです。

おそらくジャンプだけでなく、少年漫画原作のアニメ全般にいえる傾向かもしれませんが……。

 

いったいなぜなのか?理由は様々あると予想できますが、最近の通年アニメの厳しさを物語る一つの例がこちら▼。

国民的とも呼ばれるワンピースのアニメが「クソアニメランキング」というネタ半分のランキングでそこそこ上位にランクインしてしまったのです。

 

放送20周年という通年アニメとしてなかなかの長期放送に達しているワンピースですが、近年は作品としてのクオリティ”、そして”原作への追いつき”がかなり厳しくなっており、それが不名誉な称号につながった最大の理由だと思われます。

そしてこの2つはそのまま”通年アニメ”のデメリットでもあるのです。

 

鬼滅の刃』に代表されるように、現在の日本アニメのクオリティは凄まじいレベルに達しています。

十数年にわたるアニメブームでの競争や、ファンからの厳しい要求によって品質が向上し海外からも高い評価を得るようになったわけですが、その裏では制作スタッフの低賃金・重労働と同時にギリギリのスケジューリングが行われていることが次第に広まっていきました。

そんな中で、通年アニメは少なくとも3クール分以上に相当する年間40話を超える話数を制作する必要があります。放送するテレビ局の都合でお休みがあるとはいえ、この膨大な作業量をこなすため通年アニメのクオリティはどうしても1クールのアニメに比べて幾分が劣る部分があります。

それでもかつては視聴者に十分に許容されていました。

しかし、近年の増え続ける高品質なアニメによってファンの目が肥えた結果、通年アニメのクオリティに不満を感じる人が続出しているのです。

 

さらに”原作への追いつき”への対策として、通年アニメでよく見られるアニメオリジナルストーリーも近年の原作重視の傾向から忌避され、最近では見かけなくなっています。

 

視聴者としての主観ですが、漫画をアニメ化する際に原作と違和感ないスピード感で制作すると、だいたいアニメ放送1回分で原作をおよそ2話消費します。これは仮に原作が50話達している時点でアニメがスタートして毎週放送されると、単純計算で49週目には原作に追いついてしまいます。

このペースでは、オリジナルストーリーを避けた1年以上の放送はほぼ不可能も同然です。結果、テレビ放送におけるオリジナルストーリーはほぼ消滅しつつあります。

 

なおほぼ唯一の例外である近年のワンピースは、この”不可能”を、物語に影響を及ぼさないプチエピソードを入れ込んだり、細かいセリフや演出をちょこちょこ追加して引き延ばすなどの苦肉の策を駆使して放送されています。

この言わば"減速化手法"は、アニメオリジナルストーリーによる原作との齟齬を生むことを避けることができた一方で、各場面のスピード感が見るからに損なわれました。

 

その一例として、個人的によく覚えているのがドフラミンゴとの最終決戦です。

ルフィの大猿王銃(キングコングガン)に対して、ドフラミンゴはゴッドスレッド(神誅殺)を放ち、原作ではキングコングガンがゴッドスレッドを衝突と同時に打ち破って、いわば一蹴するような形で決着がつきます。

一方、アニメではゴッドスレッドがキングコングガンが拮抗するような演出に変わっています。その時間も約30秒以上というバトル中であることを考えるとかなりの長さでした。

"一蹴”と"拮抗"で表現したように、原作とアニメで印象のまったく異なるものになったので、かなり違和感があったことを覚えています。似たようなことはルフィとカイドウの初戦でも生じています。

 

とにかくこうした苦肉の策を常用しないといけないほど、オリジナルストーリーなしのアニメ版ワンピースは原作への追いつきが問題となっています。

これは通年アニメをやる上での大きなデメリットとして視聴者はもちろん制作社側にも強く印象づけています。

 

結局のところ今現在、通年アニメを制作するとなると、1クール単位のアニメに相当するレベルのクオリティ原作への追いつきという2点をうまく克服する必要があります。しかし、わざわざそこに苦心するぐらいなら、始めから1クール単位でスタートしたほうがデメリットを解消できるので、今のような通年アニメ減少のような状況になったのでしょう。

 

しかし、個人的には通年アニメの“可能性”に期待している部分もあるので、次回はそこらへんを話したいと思います。

 

……続く。