TAMAHACHI08 -official blog-(※旧・大西洋少年ジャンプ総合研究所)

AI召喚術士としての活動拠点&少年ジャンプやアニメ・マンガ等への個人的な意見・感想を発信


【今週の少年ジャンプ番外編】"最高傑作"ではなく"意欲作"となった『ONE PIECE FILM RED』



8月6日(土)、ついにファン待望の劇場版ワンピース『ONE PIECE FILM RED』が公開され、8日間で興行収入50億円突破というシリーズ歴代最高記録を更新するなど好調なスタートを切りました。度々こちらのブログで劇場版ワンピースに関する記事を執筆している自分も、友人とともに先日鑑賞してきました。

結論から述べますと、フィルムREDは"最高傑作"と呼ぶにはだいぶ異質である一方、”意欲作”と呼ぶに相応しいインパクを持った1作でした。

というわけで、自分が上記にように結論づけた理由について持論を展開したいと思います。

 

(※以下『ONE PIECE FILM RED』のネタバレを含みますのでご注意ください!)

 

 

 

■『ONE PIECE FILM RED』が異質である理由①

明確な悪役・敵役が登場しない

歴代の劇場版ワンピースには必ず悪役・敵役が登場していました。尾田栄一郎先生が製作に関与するようになってからでいえば、金獅子のシキ(『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』2009年)/ ゼット(『ONE PIECE FILM Z』2012年)/ ギルド・テゾーロ(『ONE PIECE FILM GOLD』2016年)/ ダグラス・バレット(『ONE PIECE STAMPEDE』2019年)などです。

以前の連載記事で書きましたが「フィルムZ」まで劇場版ワンピースは「敵の部下に2人に対し、ゾロとサンジが個別に戦って勝利をした後、敵の大将をルフィがタイマンで撃破する」というフォーマットを踏襲していました。それが「フィルムゴールド」でゾロとサンジ以外の仲間がより目立つという変化の兆しを見せ、「スタンピード」では麦わらの一味以外のキャラクターが活躍するなどの改良が行われてきました。

いずれの作品もルフィたちが「ぶっとばす」べき明らかな悪役がいたわけですが、「フィルムレッド」ではそれがいません。厳密にはウタや元凶となる魔王トットムジカが悪役ではあるのですが、ウタは上記4作の敵のような“悪者”ではなく、魔王トットムジカに利用された悲劇ヒロインという存在でした。そしてそのウタを利用したトットムジカも“意志のない化け物”といった感じで、倒すべき対象ではありましたがやはり上記4作の”悪者”とはだいぶ立場が違いました。

むしろ一般市民への被害に構わず"正義"のための行動を起こした、物語後半の海軍のほうが悪者っぽく見えたぐらい、「フィルムレッド」は悪役不在の作品でした。

 

ONE PIECE FILM RED』が異質である理由②

物語が並行する2つの世界が登場

物語の中盤で明らかにされたウタの「ウタウタの実」の能力”歌を聞いたものを夢の世界「ウタワールド」に導く”ですが、これにより映画の序盤からすでにルフィたちや潜入していた他の海賊、海兵、さらに一般市民の観客までが仮想空間「ウタワールド」に取り込まれていたことが発覚。そのまま物語はクライマックスまで“現実世界”と“ウタワールド”が並行する形で進みます。

こうした「現実と夢」というの2つの世界を並行して描くというアイデアは昨今では決して珍しくはありませんが、話がややこしくなるためどちらかと言えば玄人向けの作品に使われます。それがシンプルさが求められる少年マンガの王者たる『ONE PIECE』の映画で使われたのです。そもそもワンピースでいわゆる幻覚といった“精神攻撃”系の能力が登場することも珍しく、夢の中の仮想空間という設定はまったく予想もしなかったので、一瞬戸惑いました。“並行世界”というややこしさを生む設定を取り入れたことは劇場版ワンピース的にはかなり斬新だと感じました。

 

ONE PIECE FILM RED』が異質である理由③

まさかのハッピーエンドでない……

これまでの劇場版ワンピースは基本的には「ルフィが敵をぶっとばして解決」というなんだかんだハッピーエンドの物語でした。しかし、「フィルムレッド」は違いました。

これまでのクライマックスは①で触れたように、ルフィが悪役を倒して終わるという展開は変わりませんでした。一方「フィルムレッド」は、まず敵となったウタに対してルフィは終始戦うことを拒みます。ルフィにとって昔なじみの“大切な仲間”であることから、時折無抵抗の姿勢で説得を続けます。この時点で明らかに過去に前例のない展開です。

そして、シャンクスが登場してもなお死ぬ覚悟で己の夢を果たそうとするウタに対して、元凶であるトットムジカを倒して“ウタワールド”を打ち破ろうとルフィたちは、現実世界側のシャンクスとともに見事にトットムジカを倒します。これまでの劇場版なら、ここでルフィたちの大勝利で終わりますがそうはなりません。

トットムジカの影響を受けすぎ戻れなくなった“ウタワールド”の皆を救うため、決心を改めたウタは今度は「ウタウタの実」の能力を発動して皆を現実世界に引き戻すため絶唱。その後なんと絶命します。

エンドロールではウタの残した歌が世界中に広まる様子を描かれ、最後の最後はルフィの“海賊王におれはなる”というセリフで映画は幕を閉じました。

つまり「フィルムレッド」は“悲劇のヒロインの死亡”という、とてもハッピーエンドとは言えない結末を迎えるのです。「フィルムZ」のような男の散りざまならともかく、ワンピースでヒロインが息絶えるなんてオチは”異例過ぎる”といっても過言ではありません。

 

以上ざっくりと『ONE PIECE FILM RED』の異質さについて並べてみました。

ただ、赤髪海賊団やAdoさんのこととか「フィルムレッド」で他に触れるべきところがまだあるので、なるべく早くに続編記事を出したいと思います。

とりあえず今回はこれまで。

 

▼過去のワンピース記事はこちら▼

tamahachi08.hatenablog.jp

tamahachi08.hatenablog.jp

tamahachi08.hatenablog.jp

tamahachi08.hatenablog.jp

tamahachi08.hatenablog.jp

tamahachi08.hatenablog.jp