TAMAHACHI08 -official blog-(※旧・大西洋少年ジャンプ総合研究所)

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【私見コラム】ネット・SNSで話題の「AIイラスト」、Stable Diffusionによる30日間の”召喚”で感じた驚異と脅威(後編)



▼前編はコチラ▼

tamahachi08.hatenablog.jp

前回の記事でStable DiffusionNovelAIといった画像生成AIがいかに"驚異的"なのか、自分の体験談を元に書いてみましたが、後編の今回はそんな画像生成AIがもたらす”脅威”について個人的な見解を述べたいと思います。

 

前回の冒頭で触れた友人ですが、めでたく年末のあのイベントに受かり、私も販売の手伝いに伺う予定なのです。実はその当選の連絡を受けたとき、自分はAIイラストにハマったが故のちょっとしたトラブルを起こしかけました。

ちょうどその連絡を受けたのが召喚作業真っ只中の夜、しかも宅飲みで酔った状態だったので、勢いで「応援イラスト送るよ」と唐突かつだいぶイキった返信をしてしまいました。あとから「どゆこと?」と聞かれて我に返り、泥酔者の妄言としてなかったことにしてもらいましたが、今思うとあの時の自分は”絵を生み出せること”に完全に舞い上がっていました。

冒頭のイラストは友人への返信直後に、イラストの一例として試しに作った某アイドルゲームのキャラクターです。自分はいきなり"これ"を今年初めて即売会デビューを果たした新米イラストレーターの友人に送り付けようとしたのですが、もし実行していたら確実にいい迷惑であっただろうと反省しています。なにが"悪い"かはうまく言葉に出せませんが、”絵描き”である友人の気分をまあまあ害したことは間違いないと思います。ちなみに友人には私がAI召喚術士を名乗っていることは明言していません。

 

結果的に自分は未遂で終わりましたが、世間ではすでに本職の絵師やイラストレーターと、AI術師との間に軋轢が生じている事例がいくつか話題となっています。アメリカのアニメNYCとアニメロサンゼルスでAIアートでの参加が禁止されたり、本職のイラストレーターさんの投稿イラストを無断で再召喚して返信する術師が表れたり、イラスト投稿サイトでAIイラストの大量投稿が不評を買うなどなど。

元々学習データとして投稿サイトのイラストが使用されていること自体、少なからず疑問を持たれていることもあり、AIイラストは本職の方からはややネガティブなイメージを持たれている傾向があります。これは逆に言えばそれだけ現在のAIイラストが彼らにとって"脅威"になっていることの裏返しとも言えます。

 

少し前から”将来AIにとって代わられる職業”みたいのが注目され、イラストや小説などクリエイティブ分野でも、ちょこちょこそれっぽいサービスや技術が登場していました。しかし、多く人はそれがあくまで"将来"という数年から十数年後単位で起こる出来事だと認識しており、AIを使ったイラスト作成も完成度の面などからまだまだ人間には敵わないとさほど注目されることはありませんでした。そんな流れをStable DiffusionやNovelAIが一変させました。

 

前回の記事で触れたとおり、今年の8月に今のAIイラスト流行の1つのキッカケとなったStable Diffusionの無償公開がされました。それからおよそ2週間後に公開されたGIGAZINEさんの記事がこちらです。

gigazine.net

記事の中でStable Diffusionの実質的なデフォルトの学習データと、イラストに特化したWaifu Diffusionでそれぞれ召喚したイラストが比較できるように掲載されていますが、皆様いかがでしょう?

デフォルトと比べるとWaifu Diffusionがいかにイラスト向けにチューニングがされているかいう点はよくわかりますが、それでも記事公開の9月中旬時点ではAIイラストまだ明らかに本職には敵わないレベルの完成度だったと気づきませんか?

 

それが約1カ月後、自分がStable Diffusionを導入した直後はこれぐらい。

 

さらにほぼ同時期に画像生成機能が追加されたNovelAIを使って、twitterではすでにこんなイラストが召喚されていたそうです。

【※以下twitterより転載】

【転載終了】

 

この変化、というか進化がたった1カ月で起きたのです……。

前回の記事でAIイラストを現状を「日進月歩」と書きましたが、多くの術師が様々な呪文のトライ&エラーを続け、同時に学習データの向上も行われた結果、今では絵師レベルのイラストを次々と生み出されれいます。実際は「飛躍的」という言葉でも生ぬるいぐらいAIイラストはこのわずかな期間で、素人の絵レベルから神絵レベルに超進化を遂げたのです。

これこそがAIイラストのもう1つの"脅威"なのです。

 

夏コミから冬コミの間で、神絵師やイラストレーターの価値を根本から覆すような出来事が現在進行形で起きている。術師側として堪能しているとはいえ、冷静に考えると恐ろしいことに加担している気もします。

「自動運転技術が将来運転手の職を奪ったり、自動車の価値を変える」と10年ぐらい言われて未だに部分的にしか実現していおらず、メーカーもユーザーもゆっくり見守っているの対して、画像AIはたった3カ月の劇的な進化により、関係者が大慌てで対応している状態なのです。

先述した軋轢は、このAIイラストの急激すぎる進化に社会の対応が追いついていないがために起きているのだと自分は考えています。2000年代前半、YouTubeを始めとした動画投稿サイトが出現した際も、著作権違反やプライバシー侵害、危険行為、ポルノ問題など大なり小なりトラブルが生じていました。急な技術革新が起きると、必ずこういう問題は発生します。

新しい技術に飛びついたユーザーが悪気のあるなし関係なく舞い上がって、様々な試みを繰り返すのはどうしても避けられません。まだ適切なルールも定まっていないため、イラストの大量投稿や無遠慮な画像流用など、もっとも影響を受ける本職のイラストレーターへの配慮が欠いた行動も出てしまっている。この点は今後良識のあるAI術師の間で改善していくべきものだと思います。

 

絵を描けない者にとっては”夢のアイテム”、絵を描ける者にとっては”悪魔の存在”。現時点の画像生成AIはこうゆう風に認識するのが適切だと個人的に感じています。

とりあえず自分はそれを心の片隅に置きつつ、日々の召喚に邁進したいと思います。

 

最後までお付き合いいただきありがとうございました。