TAMAHACHI08 -official blog-(※旧・大西洋少年ジャンプ総合研究所)

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【今週の少年ジャンプ番外編】『終末のハーレム』の凋落で分かる「ジャンプ+」の躍進



 

サービス開始から今年で9年目を迎える少年ジャンプ発の漫画アプリ「ジャンプ+」。ここ最近は『SPY×FAMILY』がアニメ化して大ブームを巻き起こし、『怪獣8号』や『ダンダダン』も話題になるなど、数ある漫画アプリの中でもトップクラスの人気を誇る存在となりました。

影響力については、まだまだ本誌である「週刊少年ジャンプ」が強いものの、ジャンプを含めた漫画雑誌全般が少なからず部数を減らし続けている中、アニメ化作品が続々現れるなど、今後のさらなる成長が期待されます。

 

……というニュースサイトでも当たり前のように書かれている序文に続けて、久しぶりの番外編記事で取り上げたいのが、"かつて"ジャンプ+看板作品として注目を集め、まもなく最終回を迎える終末ハーレムです。

少なからずご存知の方はいるとは思いますが、「終末ハーレム」は2016年からジャンプ+で連載がスタートし、「ウイルスによって男性がほぼ絶滅した近未来」を舞台に、生き残った5人の日本人の男たちの運命を描くという超男性向けマンガです。連載開始と同時に、エロゲーでよくあるこの"男性絶滅危惧"設定を大真面目にSFチックに仕上げ、成人誌でも実績のあるマンガ家によるギリギリのH描写が、(当然男性を中心に)ネットで大きな話題となりました。妙に注目を集めたせいでAppleからアプリ全体が警告を受けたほどです。

 

しかし、そんな話題から早数年がたち、当時の人気はすっかり過去の栄光と成り果てました。

ジャンプ+には、作品1話ごとに面白かったら最大10回タップして投票することができる"いいジャン"というシステムがあり、読者にもわかりやすい人気の指標として使われています。

先述したSPY×FAMILYやダンダダンなどの大ヒット作が"100万超いいジャン"、かつてジャンプ本誌で連載されてアニメも放送された『あやかしトライアングル』が平均30万台いいジャンを記録しており、個人的見解ではだいたい20万いいジャン以上で、ある程度"人気がある"作品と認識しています。

 

では「終末ハーレム」はどうなのかというと、現在連載中の最終章は、直近の2話の”いいジャン”数が約16万で、コメント数は300前後となっています。大ヒット作ともなるとコメント数も1000ぐらいに達するので、現在の人気連載作品と比べて明らかに低調なのがわかります。最終章のはじめは60万や40万“いいジャン”だったことを踏まえるとだいぶ尻すぼみになってます。昨年のアニメ放送もほとんど話題にならず、もはやすっかり忘れられた存在となってしまいました。

 

"いいジャン"やコメント数はあくまでもジャンプ+アプリ上で確認できる指標なので、実際はアプリ版未公開サービスシーンが見られるブラウザ版で楽しんでいる読者も少なからずいると思います。それでも、他のジャンプ+の人気連載が20万~30万いいジャンを記録してことを考えると、かつての人気作からの"凋落感"は否めません。

 

なぜそうなったのか。

物語方面の話はややこしいので割愛しますが、大きな要因の一つにジャンプ+の読者層の変化があると思われます。ハッキリ言えば、女性読者が増えました。もちろん、過半数までは達してませんが、少なくとも現在は“男性が圧倒的”のような状況ではありません。

少し前のジャンプ+には『モネさんのマジメすぎるつき合い方』や『早乙女姉妹は漫画のためなら!?』など、だいぶ男性よりのラブコメがいくつか連載されていましたが、現在はだいぶ絞られており、アプリ全体では男性向けH系ラブコメは基本的にマイノリティなジャンルとなりました。

かつての電子コミックには、"誌面には載せにくい過激描写の作品が売れる”という傾向があり、漫画アプリもそういう作品が好まれる傾向がありました。しかし、男女問わず電子コミックを購入し、紙コミックも上回るなど、世間的に一般化するにつれて、過激描写だけでは人気にならず、むしろ避けられるという真っ当な流れに戻りました。

ジャンプ+も同様で、ジャンプ本誌で多数の女性読者がいるように、女性読者が日常的に利用するようになると、それまで"男性向け"に人気だった“過激”な作品があまりウケなくなりました。

 

そうなると“過激”の最筆頭・代表だった「終末ハーレム」も盛り下がることは避けられません。そこに連載休止やメディアミックスの困難具合、遅滞も相まって、現在のような低調状態に陥ったのだと思われます。

しかしこの流れは、一部男性にとっては残念でも、ジャンプ+を含む漫画アプリ全体では作品の健全化や多様化につながり、更なる読者層の拡大に至っている裏返しにもなります。ある意味「終末ハーレム」や過去のH系作品には、"基礎となる男性読者の獲得に貢献した"という役割を果たしたのでしょう。

そうした役割を終え、まもなくひっそりと退場する「終末ハーレム」ですが、ひと言「お疲れ様でした」お伝えして残りのコミックスも購読させていただきますwww。

 

……ちなみにスピンオフ……というか同名のまったく別作品である『終末ハーレム ファンタジア』はまだ続きます。戦記物ファンタジーとしてそこそこ盛り上がっているので、興味あればどうぞ。